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今,なぜ『資本論』なのか。現代にあって,19 世紀に書かれた『資本論』を読む必要など,どこにあるというのか。このような懐疑が社会を覆うようになって久しい。とりわけソ連崩壊後の1990 年代以降,日本社会にはびこっているのは『資本論』の学問的意義を否定するおびただしい言説であり,マルクスの思想と学問そのものを軽視し,過去に葬り去ろうとする風潮である。この風潮は,人間精神の貧困という点でも,社会そのものの在り方という点でも,決して健全なものとは思えない。私は,今こそ『資本論』に立ち返る必要があると考える。本書で紹介する東北大学名誉教授・田中菊次先生は,戦後60 年以上にわたって『資本論』の学問性を一貫して探究している経済学者である。その学説は,いわゆる「『資本論』未完成」論といわれ,『経済学の生成と地代の論理』(未来社,1972 年),「『資本論』の論理」(新評論,1972 年),『マルクス経済学の学問的達成と未成』(創風社,1989 年)などの諸著作にまとめられている。...... 新聞記者を職業としている私は,田中先生に多くのインタビューをお願いし,その学説の内容をできるだけご自身の言葉で語っていただこうと考えた。このインタビューは一年に1回のペースで行われ, 2013 年ごろまでほぼ足掛け8年に及んだ。また,折りにふれて『資本論』の内容に関して手紙で質問を差し上げ,経済学の諸問題に関する多くの返信をいただいた。書簡はソ連崩壊後の1992 年から始まり,最近の著作『論究』の出版前後の時期まで,ほぼ四半世紀に渡っている。私の手元には膨大な書簡とインタビューの記録が残されている。これらを元にして,『資本論』の未完成とその秘密を探ること。そして「田中経済学」は何を目指しているのかを,その現代的意義と共にできるだけ平明に叙述してみること。これが本書の目的である(本書「序文」より)
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出版社からのコメント
今,なぜ『資本論』なのか。現代にあって,19 世紀に書かれた『資本論』を読む必要など,どこにあるというのか。このような懐疑が社会を覆うようになって久しい。とりわけソ連崩壊後の1990 年代以降,日本社会にはびこっているのは『資本論』の学問的意義を否定するおびただしい言説であり,マルクスの思想と学問そのものを軽視し,過去に葬り去ろうとする風潮である。この風潮は,人間精神の貧困という点でも,社会そのものの在り方という点でも,決して健全なものとは思えない。私は,今こそ『資本論』に立ち返る必要があると考える。本書で紹介する東北大学名誉教授・田中菊次先生は,戦後60 年以上にわたって『資本論』の学問性を一貫して探究している経済学者である。その学説は,いわゆる「『資本論』未完成」論といわれ,『経済学の生成と地代の論理』(未来社,1972 年),「『資本論』の論理」(新評論,1972 年),『マルクス経済学の学問的達成と未成』(創風社,1989 年)などの諸著作にまとめられている。...... 新聞記者を職業としている私は,田中先生に多くのインタビューをお願いし,その学説の内容をできるだけご自身の言葉で語っていただこうと考えた。このインタビューは一年に1回のペースで行われ, 2013 年ごろまでほぼ足掛け8年に及んだ。また,折りにふれて『資本論』の内容に関して手紙で質問を差し上げ,経済学の諸問題に関する多くの返信をいただいた。書簡はソ連崩壊後の1992 年から始まり,最近の著作『論究』の出版前後の時期まで,ほぼ四半世紀に渡っている。私の手元には膨大な書簡とインタビューの記録が残されている。これらを元にして,『資本論』の未完成とその秘密を探ること。そして「田中経済学」は何を目指しているのかを,その現代的意義と共にできるだけ平明に叙述してみること。これが本書の目的である(本書「序文」より)